【イベントレポート】多様な学びフェスティバル大阪を開催しました!

2025年1月26日(日)大阪市立心和中学校にて『多様な学びフェスティバル大阪』を開催しました。

主催は大阪府フリースクール等ネットワーク。
フリースクールをはじめ、オルタナティブスクール・親の会・その他こどもの居場所づくりや支援に携わる民間団体が、それぞれの現場の活動だけでは手の届かないことも、学校や行政機関と連携することによって、不登校のこどもたちをとりまく社会環境を、よりよいものに変えていくべく取り組んでいます。

今回は、多様な学び化学校大阪市立心和中学校に会場をお借りし、大阪府・大阪市・堺市教育委員会のご後援をいただきました。

当日はフリースクールの関係者だけでなく、こどもを含むご家族や、学校など教育関係者など様々な立場の546名の方にご参加いただきました。

文科省の不登校対策「COCOLOプラン」では、全国300箇所に多様な学び化学校の設置を目指しています。そして、多様な学び化学校に関して「人事交流等を通して、NPOやフリースクール等との連携を強化する」とあります。

ではそれを、具体的にどのように行なっていくか…?

いわゆる”えらい人”だけが連携するのではなく、当事者のこどもたちも、保護者の方も、現場の学校の先生も、様々な関係者がみんなで交流し、学び合い、それぞれの理解を深める場にしたいという願いから生まれたのが「多様な学びフェスティバル大阪」です。

この記事では、それぞれの講座のレポートを掲載します。

レポートは、イベント運営に関わってくれたボランティアスタッフによるものです。

ボリュームたっぷりの記事ですが、ぜひご覧ください。

【フリースクールの若手スタッフが話してみる会】

フリースクールの若手スタッフが話してみる会は、フリースクールの若手スタッフが中心でしたが、心理学を学んでいる大学院生やこども食堂を運営している方、これからフリースクールを開校するという方など、様々なバックグラウンドを持つ人同士での意見交換が活発に行われました。

テーマは大きく分けて2つで、フリースクールのモットーと活動についてと、子どもとの関わり方についてでした。
前者では、こどもの自主性に任せてルールを設けずに過ごし、勉強についても興味があれば自然とやるようになるはずという考えのもと、強制はしないということや、フリースクール内でスタッフと保護者との関わりを活発に行い、さらに保護者同士の意見交換、いわゆる保護者会のようなものを実施するということが話題にあがりました。
後者では、子どもと関わる際に心がけていることについて主に話し合われました。

それぞれの子どもたちの話を平等に聞くこと、自己開示をしすぎずに一定の距離を持つことを大事にしているという意見や、子どもの相談相手となる際には、悩みを聞きながらも結果を決めつける断定はせずに最終的には自主性に任せるというお話がありました。

【多様な学び化学校 心和中を知る】

登壇者:学びの多様化学校 大阪市立心和中学校  盛岡校長先生
不登校児童生徒が増え続ける中で、国は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)をまとめ、「学びの多様化学校(旧:不登校特例校)」を推進しています。大阪府内では初めて、大阪市に心和中学校が開設されました。

講座では、心和中学校の校長先生から、心和中学校の特色などについての説明がなされ、最後に参加者からの質疑応答の時間がありました。以下に、内容の一部を紹介します。

心和中学校は、令和6年4月1日に開校した「学びの多様化学校」で、現在の生徒数は約120人です。学校の内装はIKEA鶴浜などの協力により「学校らしくない学校」に改装されており、基本的に校則はありません。授業時数は、1015時間(標準授業時数)から770時間に変更されています。授業に出るかどうかは各自で判断し、出ないときは、図書館で自習をしたり、リラックスルームで休憩をしたりします。生徒間に学力差があるため、「Self-Quest(セルフクエスト)」の時間が設けられています。1〜5限は昼間部、5〜8限は夜間部(16歳以上)となっているため、5限は昼夜間部の生徒がともに授業を受けることができます。また、生徒は、eスポーツやドローンを活用した探究学習、月に一度のお楽しみ会など、特色のある授業を受けることができます。学年の担当教員は決められていますが、生徒一人ひとりの担当であるチューターは、生徒選択によって決めています。

【フリースクールのこれってどうなん?】

登壇者:松下祥貴(NPO法人ろ〜たす)、 佐藤あおい(Ecole de らじぇむ)、 上村賢登(オルタナティブスクール道の子)

参加者が直接「コレってどうなん?」と疑問をぶつけられる貴重な機会でした。

冒頭、「フリースクールを見たことや行ったことがある人?」という問いかけがあり、詳しく知らない参加者も多いことが明らかになりました。フリースクールやオルタナティブスクールの存在が、まだ広く認知されていない現状が浮き彫りになった瞬間でした。

登壇者の皆さんからは、それぞれのスクールにおける1日のスケジュールや大切にしていることなどが紹介され、参加者の関心も高まっていた様子が印象的でした。

さらに、「子どもたちの進路や就職はどうなるのか?」といった質問も寄せられ、多様な学びとその先のキャリアについて考える場にもなりました。フリースクールやオルタナティブスクールに対する理解を深めるだけでなく、学びの選択肢やその先の未来について考えるきっかけとなる企画でした。

【フリースクールの相談員から見えること】

登壇者:上田万里(フリースクールはらいふ)

フリースクールの相談機能や他機関連携の意義、支援者や保護者として本人への理解を深めるヒントなどが、フリースクールの相談員である公認心理師より報告されました。
こどもが不登校状態になったとき、どこに相談したらいいかとインターネット検索をし、公的機関よりも前にフリースクール等へつながってくる方も多いそうです。フリースクールの活用だけでなく、学齢期からその後も含めて本人の選択肢が増えるよう、医療や福祉についても検討することが重要だということでした。
「ニーズがなければ、第一歩を踏み出すことは難しい」ため、本人への理解を深め、信じられる人として関わり続けることが、こども自身や保護者が「なんとかしたいな」と思ったときに一緒に考えることができる準備であるという話もありました。

【フリースクールに 行ってから、 卒業してから〜不登校の前と後~】

当事者への関わりのヒントを知ることを目的に、不登校を経験した後、フリースクールやオルタナティブスクールに通い、現在は大学生、高校生、中学生、社会人としてそれぞれの道を歩む4人にインタビューを行いました。

まず、不登校後にフリースクールに通うことになったきっかけについて尋ね、4人のフリースクールを知ったきっかけやフリースクール初日の感想などを話してもらいました。

次に、通い始めてからの心の変化や在学中に印象に残っていることについて話を聞きました。フリースクールでは、自分の苦手な話題を無理に話さなくてもよい環境があり、安心感があったという意見がありました。また、「自分の力を発揮できる場所を見つけられた」「人との関わりが心地よかった」といった感想も聞くことができました。 

自分や周囲の変化についての話では、「性格に自信がついた」「人前で話せるようになった」といった成長を感じた経験が語られました。また、「以前は自己中心的でわがままだったが、話し合いを通して大人になれた」といった意見もあり、フリースクールでの学びが人間関係にも良い影響を与えたことがうかがえました。

さらに、現在の進路を選んだ理由や決定時の不安についても話が及びました。フリースクール卒業後、それぞれが「好きなことを仕事にした」「大学で学びたいことを学んでいる」「公立学校で勉強や部活、友人関係を楽しんでいる」といった進路を歩んでいることが分かりました。

最後に、質疑応答の時間を設け、保護者に伝えたいことを尋ねられると、保護者への感謝と「フリースクールを選ぶ際は、子どもと一緒に決めてほしい」という意見がでていました。

【公教育とフリースクールの連携って?】

登壇者:
堺市教育委員会教育支援教室スプリングポート 主任指導主事 野津喬
堺市教育委員会出張教育支援教室 指導主事 宮本 浩光
堺市立美木多小学校 通級指導教室担当 早川 里奈
お昼間の塾わなどぅ 代表 芦村彩乃
きみの森 代表 川辺響子


堺市では、令和5年12月に、フリースクール等と学校、教育委員会の連携を図るために「堺市不登校支援ネットワーク連絡協議会」が設置されました。また、同協議会は、令和6年7月には、学校外の居場所情報(不登校支援)として「堺市内のフリースクール等民間施設一覧」を作成し、堺市公式ホームページに掲載しました。このように、堺市では、公教育とフリースクール等の連携が進められています。

講座では、こうした堺市における公教育とフリースクール等の連携の経緯について、堺市の教育支援教室の方、堺市の教職員の方、堺市のフリースクール等のスタッフの方が、トークセッション形式で話し合われました。

教育支援教室の方からは、連携による公的な不登校支援を進めていくにあたって、まずフリースクール等民間施設の一覧をつくろうということになったことや、一覧をつくるにあたって各フリースクール等を訪問した際、「子どもを真ん中に」という共通性を実感したことなどが伝えられました。

堺市の教職員の方からは、連携前は、学校現場では「まず学校に」という意識が強く、また、フリースクール等を紹介するにしても、把握しきれず、難しかったことや、連携後は、連携のバックアップがあることで教職員も動きやすくなり、また、保護者からも一覧を見たという声を聞くようになったことが報告されました。しかし、現場の教職員の意識はまだ不十分なところもあるため、フリースクール等や保護者の側から教職員に声を掛けてあげてほしいなどの意見も伝えられました。

堺市のフリースクール等のスタッフの方からは、連携前は、学校や教育支援教室とフリースクール等との間には距離があったことや、連携後は距離が縮まり、よい関係で連携できていることが話されました。また、学校や教育支援教室、フリースクール等には、それぞれ特色があり、子どもにとって合う合わないがあるため、子どもにあった居場所を、それぞれを併用することも視野に入れ、見つけてほしいことなどが伝えられました。 

“問いかけ会”では、挙手制による質疑応答を通じて、参加者と堺市教育委員会、堺市のフリースクール関係者の間で意見交換が行われました。

参加者は、フリースクール関係者、学校関係者、保護者などさまざまでした。

質問では、連絡協議会の詳細や、一覧に掲載されるフリースクールの基準、学校での活用方法、公的機関への訴え方、スクールソーシャルワーカーとの連携、連絡協議会の構成メンバー、現在のフリースクールと学校の連携状況、フリースクールに通う家庭への経済的支援についてなどの意見が交わされました。

【オルタナティブスクールに通う中学生と考える“多様な学び”】

登壇者:佐野純(箕面こどもの森学園)

オルタナティブスクール(箕面こどもの森学園)について日常生活とウッドデッキプロジェクトの2点についてお話がありました。
普段の生活面では朝と帰る前のミーティングで1人ずつみんなの前で話す時間が設けられており、最初は難しくても徐々に話すのに慣れていくというねらいがあるということでした。また、基礎学習として数や言葉の学習を行い、テーマ学習として自分の興味の分野の学習を行なっているとのことでした。全校で70人と少ないこともあり、子ども同士の交流も盛んで休み時間や昼ごはんの時間は一緒に過ごして楽しいという声もありました。
ウッドデッキプロジェクトでは、中学部の学習スペースを広げることを目的とし、資金集めから施工まで専門家の助けも借りながら子どもたち主体で行われました。特に資金集めではクラウドファンディングを行い、返礼品も子どもたちで考え、良い学びになったという子どもたちが実際に話していました。

【不登校支援こんなんあったらええな】

ファシリテーター:鵜野彩花(フリースクールはらいふ)
参加者が二重丸を作るように座り、話したい人は内側の円に、聞きたい人は外側の円に座るという形式が取られました。また、話すのが苦手な人も付箋を使って自由に意見を表明できるような試みがありました。

対話の中では、「保護者がサポートや情報を見つけるのが難しい」という声が多く聞かれました。不登校児童生徒数が増え、情報が溢れかえる一方で、「本当に必要な正しい情報が掴みにくい」という課題も指摘されました。また、区役所などの公的機関に相談することに対してはハードルの高さを感じる人も多く、「結局、クチコミの方が安心できる」という意見もありました。そのため、「もっと親カフェなど、親同士がつながる場が増えればいいのに」という声が上がり、情報共有の場の必要性が改めて浮き彫りになりました。

この企画を通じて、保護者や教育関係者が悩みや経験を共有し、支え合うことの大切さが再確認されました。こうした対話の場が継続的に広がっていくことが、より良い支援へとつながるのではないでしょうか。

【ステージ発表】

講堂(体育館)では、各団体によるバンドやダンスなどのステージ発表が行われました。

発表内容はバンドやダンスのほか、ジャグリングや手話ダンスなど多岐にわたり、観客は多様なパフォーマンスを楽しむことができました。

発表者たちは堂々としたレベルの高い演技を披露し、会場は観客の手拍子や掛け声で温かい雰囲気に包まれていました。

体育館の後方には、フリースクールのパンフレットが並べられ、来場者は自由に手に取っていました。会場は自由に出入りでき、小さなこどもも後方の広いスペースでのびのびと体を動かしていました。 

【親カフェ】

コーディネート:学校に行きたがらない子を持つ親の会「フラワーズ」

まったり部屋には、287名の方にお立ち寄りいただきました。

前面のホワイトボードに設置した一言メッセージの付箋には、親から子へ、子から親へと、温かい言葉が寄せられてもいました。

飲み物を片手に、少しでもホッとできる時間、ちょっと一服の大切さを感じていただけていたら幸いです。

座談会では、各回「先生とのやり取り」「不登校には段階がある」「不登校とゲーム」と3つのテーマで話し合いました。座談会には、各回20〜40名の方にご参加いただきました。不登校にはさまざまな段階があることや、先生とのやりとりのコツについて理解を深める機会となりました。

また、長時間ゲームをする子どもの実態や、それを見守る保護者の気持ちについても共有され、教職員や保護者など異なる立場の意見や経験談を知る貴重な場となりました。

また、以下のように子どもたちも気軽に参加できるコーナーもありました。

【ヒョーゲンアソビノバmini】

コーディネート:青木敦子

主に未就学児とその保護者を対象に、こどももおとなもひとりひとり、それぞれがそれぞれの表現を安心して試して楽しむための表現遊びの場を提供くださいました。

参加者は部屋にご用意いただいた楽器や紙やアルミホイルや布を自由に使って、それぞれのやってみたいと思ったことを、思いきり表現するたのしさをその場に居合わせた人たちと共有していました。

【3種類から選べる!こどもDIYワークショップ】

コーディネート:くじら株式会社

​​工作室ではリノベーション会社のスタッフの方によって、暮らしを豊かにすることを目指したこどもたち向けのDIYのワークショップが行われました。

・ヘリンボーンが可愛い!木製鍋敷き

・ストローで作ろう!オリジナルヒンメリ
・自分の理想のお部屋を作ろう!部屋模型づくり

の3種類から好きなものを選んで、作成していただく内容で子どもたちはとても集中して、作ったものを親御さんにみせて楽しんでいる様子でした。当日材料が足りずバタバタしてしまう場面もありましたが、最終的に52名が参加して頂きました。

【似顔絵ワークショップ】         

講師:マッシュ先生

フリースクールなどでも活動されているアーティストの方から、似顔絵の描き方を教わることができました。普段スマホやタブレットでお絵描きすることが好きと言っていたこどもも、紙と鉛筆を使って、人物画のコツを教えてもらっていました。

スクリーンを使っての作品をLIVE形式で制作する場面もあり、ポップで楽しく技術的なことも体験できるプログラムであったことで興味をひいて参加される方も多い印象でした。時間いっぱい集中して行っておられたので、プログラムの終盤はお疲れが見える方もおられました。

アンケートでは、以下のようなご意見を寄せていただきました。

<全体を通じて>

「参加したブース、それぞれとても良かったです。不登校の子供たちが学校や家以外の居場所として、どんな場がありえるのか、フリースクールは、どんなところなのか少し知ることができました。ありがとうございました!」

「それぞれどれも印象的です。すぐに参考になることもあったり、ジワジワ今後も考え続けたいことでもあったり。」

<フリースクールに 行ってから、 卒業してから〜不登校の前と後~>

「実体験を聞くことができたことがとても良かったです。様々な選択やタイミングがあることを実感でき、気持ちが落ち着きました。」

<親カフェ>

「保護者が思っていることなどを意見として聞けてとても良かったです。保護者としての思いと学校としての思いが並行したり、かみ合わないことに対しての理解する場となり、とても多くの学びになった。」

<公教育とフリースクールの連携って?>

「堺市教育委員会の指導主事の先生方とフリースクールの主宰者の方々との緊密な連携が結果としてお互いが「楽になる」という構図が斬新だった。」

「堺市の委員会、学校、フリースクールの方がとても和やかな雰囲気で説明してくださり、形だけの連携ではないことが伝わってきました。連携することで子どもや保護者の選択肢が増え、安心感に繋がることがわかりました。この連携が、まだ当たり前になってない市町村の方が多いのではないかと思い、ぜひ広がっていけばいいなと思いました。」

WEBページや当日のチラシにて、各ブースがどんな参加者におすすめのものなのかを記載していました。保護者、こども、フリースクールのスタッフ、教育関係者など。

ただ実際には、想定していたよりも多くの方にご来場いただき、各ブースにもさまざまな立場の方が合流してくださったようです。

はじめてのイベントで、運営面ではたくさんの反省もありますが、お越しいただいた方の出会いと学びのある場になれたなら幸いです。

こどものこと、不登校のこと、フリースクール等のこと、家族のこと…

それぞれについて、教育関係者だけが話し合っていくのではなく、ど真ん中の当事者だけでもなく、微妙に違う立場の人たちが、お互いを尊重しながら意見を聞き合えるという場が増えていくといいなと考えています。

試行錯誤の日々ですが、対話が続いていくことを願っています。